CLAMP |  新書館
東京BABYLON
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STORY
森羅万象と共に陰陽五行を用いて吉凶を占う術者。古くは、平安時代以降へとさかのぼる陰陽師の存在は、千年経った現在でも脈々と受け継がれている。

――― 表の皇、裏の桜塚護。

日本の陰陽師を統括する二つの組織。遥か昔からこの日本を霊的に守ってきた皇一門。その十三代目当主、皇 昴流。
同じ陰陽師でありながら、表舞台には姿を見せず、影から日本史を支えてきた暗殺集団、桜塚護の当主、桜塚星史郎。
彼らの出会いが何をもたらすのか。
光があれば、必ず影が存在するように、華やかなりし大都市、東京には、深くて濃い闇もまた存在する。誰をも受け入れる代わりに、誰の存在も希薄にさせる。
滅びの道を歩む東京を舞台に、光と影の攻防は激しさを増していく。








CHARACTERS


すめらぎすばる
皇 昴流
皇一門の第十三代目当主。双子の姉がいる。
能力は並ぶ者のないほど秀でているが、まっすぐで純粋な性格のため、活かしきれていない部分もある。見た目がとても幼く、また女の子にも間違えられそうになるほど。温和で天然かつ野暮天。他人のことを大切に思うあまり、結構無茶をしては周囲を心配させる。将来は動物園の飼育員を目指して家業の傍ら勉強していた。
「僕は平凡な陰陽師ですから」


すめらぎほくと
皇 北都
昴流の双子の姉。双子のため、見た目はほとんど区別がつかないが、明瞭快活な性格のため把握されやすい。昴流とはほぼ正反対で社交的、活発な性分。多弁で世情にも詳しい。将来の夢は団地妻ということで今から花嫁修業にいそしんでいる。料理も上手い。昴流のことを大切に思っている良き姉にして母のような存在。勘が鋭く、行動力はあるが、陰陽術は少ししか使えないらしい。その分、体術には長けている。
「昴流を泣かせたら、殺すわよ」


さくらづかせいしろう
桜塚 星史郎

新宿歌舞伎町桜塚動物病院の獣医で、暗殺集団、桜塚護の当主。だが、昴流に好意を抱いているようで仲良し。大抵昴流の家か桜塚病院かのどちらかに居る。いつもは温和で優しく誰もが慕う獣医さんだが、それと相反するように冷徹で非情な顔も持っている。式神を使役し、裏で昴流のサポートをすることもあるが、その理由は不明。なんからの『賭け』をしているらしい。実力は先代の皇当主を凌ぐといわれている。
「僕は昴流くんほど甘くありませんから、術を甘んじて受けるなんて真似はしませんよ」
 
collection of words ネタバレ有
北都 「男はねっ、女に騙される為にこの世に存在しているのよ。女を騙して、あまつさえ捨てるなんて三百光年早いわ!!!」

北都 「星史郎ちゃん。『送り狼』が駄目でも、せめて『送りシェパード』くらいにはなりなさいよ」
星史郎 「そうだ、みんなで行きませんか?ピクニックみたいで楽しいですよ、きっと」
北都 「ちょっと!あたしはお邪魔コアラになるのは、いやよ」
星史郎 「何を言うんです、北都ちゃん。北都ちゃんは将来、僕の義姉さんになる人じゃないですか。今から親族間の親睦を深めておかねばっ!!」
昴流 「なんの話なんですか?なんの!!」

星史郎 「それでも、僕はこの東京が大好きですが、ね」
昴流 「どうして、ですか?」
星史郎 「この地球でたったひとつ。滅びへの道を『楽しんで』歩んでいる都市だからですよ」

星史郎 「御存知ですか?桜の下には、死体が埋まっているんです」
昴流 「『したい』……ですか?」
星史郎 「桜の花が毎年こんなに綺麗に咲くのは、その下に死体が埋まっているからですよ。桜の花びらは、ね。本当は白いんですよ。雪みたいに真っ白なんです。じゃあ、何故、桜の花びらは『薄紅』色か知ってしますか?その木の下に埋まっている死体の血を吸っているからですよ」
昴流 「桜の下にいる人たちは、苦しくないんですか?」

北都 「あなた達、公務員?公団は持ってる?お墓は?財形貯蓄は?……どれも持ってなくて、この私に声をかけようなんて十万年早いわ」

北都 「警察も大変なのよ。一生懸命働いても国民は煩いし、『自分達の税金で養ってる』とか言う人がよくいるけど、警察に勤めている人もきちんと税金は納めているのに、ね」

友達 「わたしのこと『カワイソウ』と思ったの?」
北都 「いいえ。貴方が生きてきた十何年間の人生すべてを、ちょっと話を聞いたくらいで『かわいそう』で括ってしまうなんて、貴方に失礼よ。貴方の人生は、貴方のものよ。他人が『かわいそう』だとか『しあわせ』だとか計れるものじゃないわ。『日本人』とか『外人』とか、こんな『単位』で人間をひとまとめにしないで、私と貴方はおんなじ『人間』よ」

星史郎 「貴方達が、どれだけバカなことを口走ろうが、誰に迷惑をかけようが、僕にはまったく関係ありませんし、興味もない。……ですが、昴流くんを傷つけたのは、許せませんね」

星史郎 「この世で一番偉いのは、ちゃんと地に足がついて、一生懸命日々『普通』に『生活』している人たちです。毎日早起きして、毎日学校へ行って、毎日働いて、泣いて、笑って、悩んで、苦しんで、一生懸命『現実』を『生きて』いる……それほど『普通』のひとたちを笑うのなら、貴方達はその『普通』の人たちと同じように『生きて』いけるんですか?」