皆川 亮二 作画・たかしげ宙 原作  |  小学館
スプリガン
SPRIGGAN
→ ネタバレコメント



STORY
かつてこの地球には、優れた文明があった。
――― 現代では到底及びもつかない知識・科学力を持っていた。超古代人の遺産が、今もなお地球上の各所に眠っているという。
だが、20世紀末……不可思議な『力』を持つ遺跡の発掘・研究に、大国の軍部が介入しその『力』の争奪を開始したのだ。

―――― ここに一枚のプレートがある。高度に発達しすぎたために滅びてしまった超古代文明の何者かが、現代の我々に警告を綴ったメッセージプレートである。
そこには古代ヘヴライ語でこう書かれてあった。


世界中にある我等の文明の断片を遺産として残そう。
だが、もしも君達にそれを受け取る資格がなければ、すべてを封印して欲しい。

われらと同じ道を歩んではならぬ……



……と。

そのメッセージを受け、超古代文明を封印することを目的に行動する組織があった。
アーカム財団……第2のロックフェラーと呼ばれている大財閥。アーカムは世界中に考古学研究所を設立して、現代の科学力を遥かに超えた文明の遺産を発掘し封印する特殊な機関を設置した。

そしてその機関のS級工作員を 『スプリガン(妖精)』 と呼んだ。








CHARACTERS


 おみなえ  ゆう
御神苗 優
見た目はどこにでもいる普通の高校生だがその実、アーカム財団の特殊工作員”スプリガン”の中でも実力ナンバー1の腕前を誇る。腕は超一級だが、人間としての情をけして忘れない。同僚であるジャンには甘いといわれつづけても一度決めたことは貫き通すタイプ。
基本装備は、オリハルコンという精神感応金属繊維と人工筋肉の組み合わせで出来た『A・Mスーツ』を着用。同じくオリハルコン製のファイティングナイフを使用している。そのほか様々な銃器を扱うことができる。(高校生にして車の運転も……)
普段は明るく常に周囲をにぎやかにさせる彼であるが、幼少の頃、『COSMOS』という特殊組織の中で戦闘機械としての能力を植え付けられたという過去を持つため、時々殺人機械としての顔を覗かせることに恐怖している。同じように恐れているのは出席日数である。毎回留年の危機を訴えている。
「まかせろ!!こんなところで死んだら『スプリガン』の名がすたらぁ」


ジャン・ジャックモンド
御神苗優の同僚かつ悪友であるスプリガン。
彼のスピードは常人を遥かに超えている。それは彼が超古代文明に作り出された『ライカンスロープ(獣人)』であるからだ。いつもは人間の姿で普通に生活しているが、身体に傷を負ったり極度の興奮状態に陥ったりしたとき、彼は変貌する。獣人化したジャンは、人間としての理性がまったくない。よって目に映るすべてのモノを破壊しつくすまで止まることまない破壊の権化と化す。
育ての母マリアとの生活の地フランスにて、『スプリガン』ティア・フラットにスカウトされアーカムに所属することになる。
「御神苗!お前は、オレがいなけれゃ100回は死んでるぜ!!」


おぼろ
 朧
功夫の達人であり、御神苗優の師匠である。
功夫とは、生命の原点である”氣”を操る。敵の氣を感じ取り動くため、通常の攻撃どころか銃も当たらない。さらに、攻撃の時には相手の体に直接氣を送り込むため、いかなる防御も効果がない。御神苗のA・Mスーツも例外ではない。彼の目的は『仙人』となること。そのため自らの功夫を鍛えあげ、より強い敵と戦うことで自分を高めようとしている。
「私は名声はいりません。私はあなたのような強い人と戦って、己を磨くことに生きがいを感じているのです」


ティア・フラット
古代高等魔術を使うスプリガン。その魔術故に仲間内からは『魔女』と呼ばれている。登場するスプリガンの中で唯一の女性。しかも美人である。大魔導師マーリンから受け継いだ魔術『コーリングビースト』を使用する。コーリングビーストとは陰陽道の式を変形したもので霊物質で作った幻影の魔獣である。魔獣は相手の魂を食らうため外傷が残らない。この場合も恐怖や攻撃的な感情を向けなければ攻撃されないらしい。空間を操ることもできるので、大抵の場所には忍び込めるようだ。神出鬼没である。
「言ったでしょ?私は魔法使いだってね」


あかつき いわお
暁 巌
<生還者>と呼ばれ、どんな過酷な条件からも生還するという実力の持ち主。アーカムと敵対する黒の商人「トライデント」の行動部隊長として御神苗と接触する。戦いのみに自分の生きがいを求めるが、常に冷静な判断を失わない。時として共に力を合わし窮地を脱することも多い。その意味では敵ながら信用にたる人物である。再三に渡って『スプリガン』とバトルを繰り広げる宿敵の1人。
「馬鹿言え、こんな命の瀬戸際の戦いは金輪際ねーかもしれねーからな。もっと楽しませてもらうぜ」


ボー・ブランシェ
ネオナチスに所属していた。人のあり方を「人間はより優れた人間によって正しき道を選ぶ、そこに幸福があるのだ。そして優秀な者は、より弱き者達を守る義務がある。そのかわり支配する者は誰よりも優れていなければならない。」と熱く語る、筋肉の塊のような男である。あまりの暑苦しさに後に相棒となる暁にまで嫌がられた。だが、あの朧に「見こみがある」と言わせた実力の持ち主でもある。
一度御神苗と朧にやられてからは、御神苗優と決闘し勝つことを目的とし、御神苗をつけまわすのだが、あまりの暑苦しさと間の悪さで大抵は相手にされない。よくTVゲームから新必殺技を開発してくる。
「愚問だぞ。私は世界最強の男、ボー・ブランシェだ」
 
collection of words ネタバレ有
ジャン 「ったくおまえは、オレがいなけりゃ10回は死んでるところだぜ」
ジャン、初登場。彼ははじめっからこうなんです・笑

マクドガル 「ただ……生きるための力だ足りなかった……」
映画にもなった話。彼も犠牲者。

御神苗 「くそったれ!お前の言う通りやっぱりオレは甘ちゃんだよ。あのガキの最後の顔が今もちらついてるぜ」
ジャン 「ああ、たしかに甘ちゃんだ。………まあ、オレはてめえのそんな所が気に入っているがな」
御神苗 「はあ!?なんだって?」
シビアな世界で戦いながらも人間としての気持ちを失わない御神苗。良き友だ。

御神苗 「この世で一番恐ろしいのは兵器を創り出す人間の心だ」
戦いがなぜおこるのか……彼は良く知っているから。

中佐 「ふん……なにが約束を破ったことがないだ!死んだらもう守れないじゃないか。どうしたんだ、スプリガン!!なんとか言えっ!」
御神苗 「うるせー、そんなにどならなくてもきこえてらぁ」
学校生活が御神苗の支えであることを聞いた中佐の言葉。普通の生活とは……戦う意味とは。

初穂 「バカヤロー、そのまま走り抜けろ!勝って死ねーっ!!」
御神苗 「……ご無体な」
転校していく友達最後のマラソン大会。いくら御神苗でも彼女にはかないませんな・苦笑

御神苗 「それより早くその像を奴等に返せ!!ぶっ殺されるぞ」
染井 「いやよ。このか弱い乙女がこんなキケンを冒してまで奪い取ったのよ。今更返せるわけないでしょ!」
御神苗 「バカタレ、か弱い乙女は、んなこたぁしねぇんだよ」
………ごもっとも。

「けど、もしそうだとすればオレはごめんだね。『死』のない人生なんて面白くもなんともねぇよ」
御神苗 「ククク……。やっぱり似たモノ同士か……」
暁、初登場。生還者として異名をとる。今後の御神苗のライバルみたいな感じ。

「意外だな。お前、この世界で活躍してるわりには少々甘すぎるぜ。だいたいアーカムが必ず正義だとはいえまい?」
御神苗 「そうかもしれないな。だがそん時にゃ、オレ自身の手でアーカムを叩き潰す」
自分の信念を持って戦いつづけることは……難しいのだ。

御神苗 「だめだよ山本さん、スプリガンでもよりによってこんな頼りねー奴を」
ジャン 「なんだとぉ!!……と本来なら一発ぶん殴ってるところだが……戦いに負けて帰って来た怪我人をいたぶってもかわいそうだとしな」
この二人が顔を合わせるといつもこうなんです。

ジャン 「……ったく情けねぇ!たった二人の女も守れねぇとはよ!!なんでこんな弱い奴がスプリガンなんだよ!?」
「弱い?優がですか?とんでもない、優は優秀なスプリガンですよ。後にも先にもこの私にナイフを突きたてたのは優だけでしたよ」
御神苗が負傷した時の会話。彼の師匠である朧にそこまで言わせるほどの実力者。

御神苗 「……キサマら、どうしてもオレの理性を切りたいらしいな。そんなにみてぇなら見せてやる。……これがお前が創り出した……殺人機械の本当の姿だ」
幼い頃に染み付けられた忌まわしい記憶。彼は人間であるのに。

ジャン 「ったく、いいか?今度ヘマったら、てめーの尻拭いなんかしねーからな!よーく、覚えとけよ」
御神苗 「ああ、わかったよ!ジャン、とりあえず礼を言っとくぜ」
口は悪いが……。ジャンは良い友人だ。

シスターケイト 「あの……1つ聞いても良いですか?あなたはどんな神を信仰しているのですか?あなたはとても強いし、恐れを知らない」
御神苗 「悪いけどオレは神様なんかこれっぽっちも信じてねーや。自分を救えるのはあくまでも自分でしかねーと思ってる」
結局、自分の力で解決しなければ人間前には進めないことを彼は十二分に知っている。

御神苗 「なぁ、朧。本当にこれで良かったのかな」
「今更考えても仕方ありません。我々は己が正しいと思ったことを全うするしかないのです」
戦争はなくならない。それは、なぜか?個人のわずかな力でも必死に生き抜く者こそが『生きている』ということ。

マリア 「……それに私たちはね、あんたよりよっぽど恐ろしいモノを相手に仕事をしているんだよ。人間と言う化け物を、ね」
ジャンの育ての母。彼女たちの方が、世間を良く知っている。そして生き抜く術も……。母は強し。

ジャン 「……あんた、何者だよ」
ティア 「スプリガン、ティア・フラット。仲間からは通称『魔女』と呼ばれているわ」()
ティア、初登場。不思議な雰囲気を秘めた女性。スプリガンとしても最強の実力保持者。

「さて……仕切直しだ。今度こそ、てめぇと思う存分戦えるわけだ。どちらかが死ぬまでだ」
御神苗 「ふん、上等だぜ。『帰らずの森』では相当世話になったからな。しっかりカリは返してやるぜ」
顔を合わせるたびに戦う二人。……あきませんなぁ。

御神苗 「俺達はまだ生きてんだぜ。たとえ神だろうとオレの命を奪う権利はねぇ、それがオレの考えだぜ。誰かの犠牲の上に築かれる未来なんかいらねーよ」
生きていくことは辛い。だが、信念を持って『今』を生きる人は強い。何かを目指してただ一心に自分の力だけを持って。

ボーマン 「しかし、本当に強くなったなぁ優。こんなにたくましくなった教え子と最後に戦えて私は幸せだったよ」
ドッペルゲンガーの使い手で優の師。敵として戦わざるを得なかった二人だが、この世界で生きることの厳しさを身を持って教える。

マクマホン教授 「私が良く言ったわよね。『過去を知ることで未来を予想する』それは人間にとって意味の無いことではない……」
御神苗 「何度も同じ愚行をくりかえすことが本当に意味の無い行為だ……だったよな?」
歴史は繰り返す……ならば、間違った道に進まない努力を人はすべきなのだ。同じ過ちを繰り返さないためにも。

「スプリガンにジャン・ジャックモンドの他にもう1人いましたね。人間のスピードをはるかに凌駕するような人物が……。ようやく本来の素質を出せるようになったという事ですよ。殺人機械としてではなく『人間』としてね」
御神苗の更なる成長ぶりに朧もうれしげ。それは何かを守るためについた力であり、彼の努力の賜物なのだから。

御神苗 「オレはこの短い休みを思いっきり堪能するんだよ!それをジャマする奴は、何人たりとも許さん!!」
染井 「奇遇ねぇ、優ちゃん。こんな所で会うなんて……」
御神苗 「げっ……染井……芳乃」
そう、彼女の行く先々でトラブルが発生する。そんな彼女が待っていたほどだからただではすまない修学旅行。がんばれ、御神苗。

御神苗 隆 「スプリガンの仕事は殺伐としすぎている。”神秘”が見たいのならオレと一緒のほうがよっぽど楽しめるぞ」
御神苗 優 「……ああ、確かにその方が性分にあってると思うよ。だけど……うまく言えないけどオレの知り合いはオレの手で守りたいし……何かあった時にオレ何もできなかったことを後悔するだろなぁ」
父子の会話。優の義父は冒険家で世界中を飛び回っている。

ボー 「ワハハハハ………。やはり来たな、スプリガン!!久しぶりだな。このボー・ブランシェを忘れたわけではなかろう」
御神苗 「な……なんでお前がここにいるんだ?ネオナチはどうしたんだよ」
ボー 「バカ者が!お前たちが壊滅状態にしておいてどうしたもくそもあるか!」
………確かに。ボーはいい奴なんですが、いかんせん『暑苦しい』やつなのでございます。スプリガン…というよりは御神苗の自称ライバルですな。

ティア 「お久しぶりね、暁さんだったかしら。その方向だとどうやら『聖櫃』に向かっているようね。だとしたら私といっしょだわ」
「………ふん、だったらどうする。スプリガンのお姉さん」
御神苗 「いっしょに行こうぜ!……ティア、やっぱり倉庫に向かってたか」
「おいおい……なんだよ、お前ら。オレは一応、おまえ等が目の敵にしている『トライデント』の一員だぞ」
御神苗 「んな事言ってる場合か!大西洋で寒中水泳やりたくなければ協力するしかねーだろ!!」
本当にそれでいいのかしら?でもまぁ、こういうところが御神苗の良い所なんだけどね。敵同士でも時と場合は選ぶらしい。タイマン勝負はあこがれますな。ところでティアの本当の年齢を知ったら暁は驚くぞ……きっと。