Do you know?







日ごろから絶対にと言っていい程笑わない。相手を嘲笑するような作った笑みは見せるけれど、素の笑顔なんて見せることのないクールな王様。
熱中すればするほど、興味を持てば持つほど熱くならず、逆に冷たくなるのが特徴で、声も態度も凍りそうなくらい冷たい。

ただルックスは恐ろしいほどカッコ良いのでチームの女性陣のみならず、行き交う世の女性たちの視線を1人で奪ってしまう。

だが、一度敵に回すと比べる相手にこまるほど恐ろしい。容赦や加減なんて言葉は風と一緒に消えてしまう。

Gボーイズのヘッド、クールな王様とはそんな奴だ。




「って言われてるんだぞ、お前」

そんなため息まじりにマコトは告げた。
いつもは多忙な王様が何を思ったかマコトの果物屋に姿を見せたのは昼過ぎ。そのまま店の奥の畳み部屋に寝転がってからすでに2時間以上は経過している。時々携帯電話のバイブレーターが振動しているが、タカシは出ようとしなかった。

「そんなこと、言わせておけばいいだろう。俺は別に気にしない」

そっけない返事をしながらもGボーイズのキングこと安藤タカシは相変わらず畳の上に寝転がっている。
理由も言わず、ただそこにいるのがマコトには不思議でならなかった。店番が仕事のマコトとは違い、とにかくキングというのは多忙だったからだ。それでついつい気になっていろんなくだらない噂を話しだしたのだが、タカシの興味を引くものはないらしい。

噂というのは、Gボーイズやガールズがいつも黄色い声を上げている、王様のこと。
奴らにとってタカシは強さと恐怖の象徴で、憧れと尊敬で溢れている。このクールな王様のために死んでも良いと思っている連中も決して少なくないくらいだ。

「俺だって気になんかしないけど」

「けど、なんだ?……不服そうな面してるぞ」

鼻で笑って、タカシは半身を起こした。今日初めてなにかしらの反応を得たような気がするのはマコトの気のせいではない。マコト自身、興味深々な態度を向けられるとは思わなかっただけに、なんとなく言い難くて視線を反らした。

「まるで、普通じゃないみたいな言われ方をするのはイヤなんだよ」

マコトは知っている。タカシはほんの少し人より頭が切れて、ほんの少しだけ他人よりルックスに恵まれてて、ほんの少し他人より喧嘩が強いだけの男だ。高校の時から不思議な雰囲気を持つ奴だけれど、笑ったり泣いたり、怒ったり、マコトと何ら変わらない感情を持っている。
決してクールなだけの人間じゃない。

「お前の笑った顔をみせてやれば、誰も『クールな王様』なんか言わなくなるのにな」

そう思ったら声が少し小さくなっていた。感傷的になることなど何一つなてことはわかっている。だけど、マコトの零した言葉の八割方はマコトの本音だった。
それを感じたのか、タカシはしばらくマコトの横顔を見詰めていた。視線を感じているのだろう、意地でもマコトは目を合わそうとはしなかった。やがて先に折れたのは意外にもタカシのほうだった。

「お前は少し笑いすぎだ、マコト」

「そうか?」

「そうだ。お前が愛想を振り撒きすぎるから、俺は笑うに笑えないんだよ」

「なんだよ、それ。俺の所為かよ」

子どものように素直に拗ねるマコトを見て、今度は息を吐き出すようにタカシは笑った。だがすぐに収め、マコトの鼻先まで顔を近づける。

「お前の回りは賑やかだからな。俺くらいの冷たさで丁度良い」

「よくわかんねぇ」

眉を寄せたマコトにそっとわざとらしく肩をすくめる。



「牽制する時に笑う奴はいないということだ」


そのときなぜか意味深でいたずらめいた笑みを浮かべるタカシに対して「誰に対して牽制するんだよ」とは言えなかった。








呟き*なんとなく。タカマコ風味で。マコトはタカシにとっての癒し系だから突然来たくなるのですよ。