| IWGPパニック |
告られるって経験、あんたにはあるだろうか。 俺の方から告白したことはないから、どんな気持ちなのかわかんないけど。でも実際は勇気がいるんだって話。 当の本人じゃないから、深く考えたことはなかったけど、まさか俺が告白される側になるとは、正直思ったこともなかった。 これが、可愛い女の子なら。 いや、可愛くなくても、女の子なら別何の問題もない。 付き合うつもりがあれば付き合うし、気持ちがなければ断るというのが筋だろう。 だけど、今回はなぜか「野郎」に告白されたんだ。 俺はどっからどうみても「男」なんだけど、こういうのってアリなんだろうか? マコトが男に告白された、というニュースは、誰が伝えるわけでもなく自然とあっとという間に池袋中に知れ渡った。 場所はいつものIWGP。春の陽気とも思えるうららかな昼間。いつものようにベンチで日向ぼっこをしていたマコトに声をかけたのは、どう見ても10代後半の真面目そうな青年だった。 トラブルシューターとして名前も顔も知られてしまったマコトだったから、また何かいらぬトラブルに巻き込まれるのかと思っていたら、確かにとんだトラブルだが、突然に告白されてしまった。さすがはトラブルシューター。 しかも、公衆の面前で、だ。 パニくったのは言うまでもない。何の冗談だ、と笑おうにもあまりに相手が真面目な顔だったので、マコトは押すに押せず、引くに引けず、しどろもどろの末、 「ごめんなさい」 と、返すのが精一杯だったという。 話としてはそこまでで、相手は現れてきたときとなんら変わりなく、頭を一度下げてから人ごみへと消えていった。どこか涙ぐんでいたかもしれないが、そんなことを気に止める余裕などマコトにはなかった。 まるで純情な女子高生か、という自己ツッコミしたくなる返答にマコト本人がなんとなく気まずさを覚えてしまい、あれからどうも公園には寄り付かなくなったのだが。 マコトを襲った突然の出来事は、どうも本人の知らぬところで思わぬ波紋を呼んでいるらしい。 「そいつを割り出し、連れて来い」 クールな王様が今日はクールではなかった。マコトが何者かにコクられたというニュースを聞いてからというもの、いつもにもまして殺気まじりの空気に包まれている。絶対零度にも思える凍えた空気に誰もが寄り付けない状況となっていた。 「身のほどという言葉を教えてやらないと、な」 不敵に笑う王様が、今日ほど怖いと思ったことはなかったと、彼の周囲の者たちは一様口を閉ざして震えていた。 「お兄ちゃんは、そんな子に育てた覚えはないぞ」 礼にい、こと横山礼一郎は、ニュースを聞くなり署内でそう叫んだとか叫ばないとか。受話器を叩きつけるように置いて、署内を慌ただしく出て行こうとする署長を数人がかりで押し留めたらしい。 「不純異性交遊、いや不純同性交遊なんて、絶対に認めるかっ!!!」 と、わけがわからないことを叫んでいたとか。 あとで吉岡が「署長も悪いやつじゃないんだがなぁ」と、ぼやいていたのをマコトは聞いた。 「ことの真相を確かめて来い」 そう氷高から命令を受けたサルは内心肩を落としたらしい。なんでもこのニュースを聞いた時、羽沢組長が卒倒しそうな勢いだったそうだ。 「真島さんには我々も一方ならぬ世話になっている。くれぐれも他に遅れをとるな」 建前上二つ返事をしたサルだったが、どうもマコトと顔を合わせづらい気分だった。 本部のドアを音もさせずに閉め、階段を降りながらそこでようやくため息を吐いた。 「マコトは知らないだろうけど、昔からあいつは女よりも野郎の方が人気があったんだよな」 中学時代の同級生は、本人の知らぬところでよく内情を知っているのだ。 池袋を突如として襲った事件は、各所でパニックを引き起こしたのだが、それを当の本人が知ることはなかった。 呟き*ギャグですから。まとまりナッシング。 |