With your hand ties.





「だから、手ぇ離せって」

さっきからずっと手を握られてて、気恥ずかしい気持ちでいっぱいのマコトが極力小さな声で言う。聴こえてないはずはないのに、タカシはずっと握ったまま離そうとしない。
この池袋の真ん中でこの様は恥かしい以外の何物でもないのだが。


「タカシ」

「なんだ?」

「なんだ?じゃねぇって……」

幼子ではあるまいに、いつまで手を繋いで歩くのだ、とマコトは言いたかったようだが、あえてタカシは気付かない振りをする。

「誰も見てねぇよ」

むしろ見せ付けてやれ、といいたげにタカシは【キング】の顔じゃなく、【安藤崇】の顔で小さく笑った。

そういえば、とマコトは思い出したことがある。
高校の時、タカシは確かにどこか掴み所のない雰囲気を持っていたけど、もっと自然に笑っていたような気がする。雑誌のグラビアアイドルやテレビドラマ、先公のこと、ダチのこと。くだらない話題で腹を抱えるほど笑っていたような気がした。
卒業して、しばらくして再会した時のあの氷のような目がマコトには信じられなかったくらいだ。少なくともマコトの前では笑うことを厭わなかった。



「マコト?」

あまりにもからかいすぎたと気持ち気にした矢先、反応が返ってこないことを不思議に思ったのかタカシがいつもの冷えた声で呼びかける。そっと手を離して振り返った。

「お前の手って、ホント冷たいな」

呟くように口を開き、マコトが少し呆れた顔で薄く笑う。そうして見上げた視線が合うとため息をついた。何かを確かめるように握られていた手首を逆の手平で何度も触る。
その仕草に一瞬、マコトが何を思っているのかタカシにはわからなかった。悪戯に腹を立てたわけでもない。呆れ顔だが、本当に呆れてしまったのでもない。自分に向けられる感情が読めずに閉口する。

「昔っから少しも変わらず、体温低いよな」

照れたような笑顔でマコトがタカシの腕を掴んだ。タカシの腕はひんやりとする。高校の時から変わらず体温が低いまま。

「お前は相変わらず温かい手だ」

握られたまま、されるままにしていたタカシが肩の力を抜くように息を吐いた。

「子ども体温って言いたいのか?」

「そこまでは言ってない」

昔はそれでからかわれたことがある。それを思い出してマコトは顔を顰めた。ハッと息を吐くようにタカシが笑う。キングとしてはめったに見られぬ表情だが、昔はあたり前だった。

いつの間にか、あたり前だと思っていたことがあたり前ではなくなっていた。それは自分たちが成長したからか、それとも忘れてしまったからなのかはわからない。

「どこに連れてってくれるんだ?」

ついとマコトが握った手を引いた。
今度はタカシが目を止める。自分からするならなんとも思わなかったが、されるとどうも気恥ずかしいようだ。

「どこか良い?」

ついつい手に目が行く。表情に出るほど感情が豊かではないが、この状態は確かに恥かしい気がしてきた。

「その前に、腹が減った」

「お前らしいな、マコト」

タイミング良く鳴る腹の虫に2人して顔を突き合わせる。久々に笑い声を上げ、繋いだ手をそのままに雑踏に消えていった。






呟き*「木漏れ日に」の続き。バカップルでエセすぎた。