そこらのオンナにはわからない魅力









今日は朝から良い天気だ。カラッと晴れた空には雲ひとつない。まだ暑い夏ほどの日差しはなく、清々しい気持ちにさせてくれる。
店の準備を大方し終えたマコトは、一息吐きながらそんな風に空を見上げた。

「今日も一日いい天気だ。何かいいことでもあればいいな」

そんなひそかな期待を抱きながらちょうど店番の準備ができた母親と交代して、いつものように池袋ウエストゲートパークに向かう。足取りはいつもより軽い。
交通量の多い交差点が近づくと途端ににぎやかさが加わる。小さい頃からこのあたりを庭のようにしてきたマコトには普通のことだが、雑多な様子はどこか殺伐とした空気も孕んでいた。
清も濁もごちゃごちゃのこの街が好きだ。マコトは素直にそう思う。

いつものように新緑芽吹いた木の下のベンチに座って、ぼんやりと行きかう人々を眺める。そういう無駄なような時間だが、実は意外と楽しかった。行きかう人々はまるで水が上流から下流へ流れるように動いていく。中には逆流していくようなヤツもいるが、それはそれで見ている分には楽しい。騒がしいクラクションの音に煙たい排気ガス。いくら有害だと言われても生まれてからこの方ここにいれば慣れるというものだ。

それにしても…と、マコトは周囲を見ながら苦笑する。

女性の姿を見つけるとついつい目で追ってしまうのが男の性というものだが、最近の女性というやつはまた派手な割にあちこちと歩いて回っては、男の目に止ろうとするんだな、と。確かに会社勤めのOLは、現場移動なども忙しなく仕事以外に話かけるな、と言いたげな険のある雰囲気をヒール音とともに響かせているのだが、どうもこの時間がアフター5に当たる女性たち、もしくは、中学、高校生のように見えるどう見ても学業を履き違えたお子さまたちが眩しい化粧と共に街を練り歩いている。

「……仮装大会でもあるのかよ」

思わず呟いて溜息をついた。
男であるから女性に興味がないわけではない。だが、どうもこの手の女というのは馴染めない。無論、向こうもそこら辺はわかっているのだろう。マコトに気付いても近づきはしないが。
それはそれでどこか悲しい思いにもなってくる。

「まぁ…俺はそんながっついてないし…」

「誰が、がっついてるって?」

負け惜しみとわかっていた呟きに返事が戻ってきて驚いて声の方向を見た。グレーのフード付きパーカーに黒のジーパンという軽装でそこにはタカシが立っている。池袋のキング様は神出鬼没だ。
唖然としてマコトが目をしばたたかせているのを面白そうに見下ろして、口端に笑みを浮かべたままマコトの隣に身を滑らせる。

「……キングは休業か?」

「まぁ、そんなところだ」

「御供同伴じゃないのか?」

「休業中だから、必要ない」

にべもなく言い放たれてマコトは驚くよりも呆れてしまった。いつも気が気ではなく「キング」の周囲に佇んでいる部下が可哀想にも思えてくる。
だが、どうもいつもの飄々とした「キング」としてのイメージがついてまわるが、もともと同級生ということもあり、安藤タカシはこんなに風に自然と笑えるヤツだった。笑わないのは、キングの時くらいだが、マコトの前ではどうもタカシの度合が強いらしい。

「それで、誰が、がっついてんだ?」

「誰でもないよ。っていうか、そんなこと聞いてるな!」

独り言にツッコミ入れられたら独り言にならないだろう、とわけのわからないツッコミを返してみるあたり、マコトの動揺具合も見て取れるというところだが。
明らかに上げ足を取って楽しんでいるタカシは、喉の奥で笑った。
不貞腐れて視線をそらせば、いつも間にか女性の視線を浴びている。その視線の先にあるのはもちろん自分ではないとわかってしまうあたり、悲しいという言葉以外に見つからない。
ああ・・・神様は不公平だ、と愚痴たら、どうもそれまでも聞かれていたらしく、タカシは周囲に目を向けた。

「フードまでかぶってるっていうのに、さすがはキングだぜ」

厭味を呟く自分自身にもイヤな気持ちを感じながらマコトはベンチにひっくり返った。
周囲を軽く見まわして、タカシは表情一つ変えることなくマコトの首に腕を回す。ギョッとする間もなく抱きしめられてマコトは驚いてとび起きようとする。だが、タカシはあっさりと押さえ込み、鼻先でニヤっと笑う。

「マコト。お前の魅力がそこらへんの女どもにわかってたまるか」

耳元で冷たくも甘い囁きにマコトは目を丸くした。

周囲では黄色い悲鳴がそこここで起こっていたという。









呟き:タカシが挑戦的です(笑) かなりの確信犯です。