気づけば妙な縁だらけ









慌ただしく過ぎていく毎日。朝から繰り返される出来事。気づけば日は西に傾き、夜中になっても終わらない仕事。
そんな毎日がただただ過ぎていく。
別に悪いわけではない。むしろ、これが望んだことだ。

キングこと安藤タカシはそんなことを思いながらいつもの日常の中にいた。
彼の仕事は池袋のガキたちを黒へと突き進めぬよう、なおかつ黒を白に侵食させないようグレーゾーンを陣取ること。どちらの付き合いもうまく運んで交わらないように、ぶつけない様に奇妙なバランスを保たせている。

(世渡りがうまい…というわけじゃない)

独り愚痴てタカシはシートに深く腰掛けた。運転手はボディーガードも兼ねている男たち。1人の身の危険など自分一人でどうとでもなるが、体裁というものがある、と一条がいうので仕方なくつけている。もちろん、知らない者たちではないから、気がねはしていない。
秘書的な役割を担っている一条にしても、池袋のG−BOYSのキングには心酔に近いものを抱いていた。そうでもなければこの仕事に関わってはいられないが、この街のガキ達の王様、キングとはそういう存在でなければならない。

車のシートに深く座り込んだまま、カーテン越しを何気なく見るとそこはいつもの池袋ウエストゲートパーク。池袋の西口公園だ。
高校の時にはよくたむろしては他愛もない話題で朝まで笑い転げていたような記憶がうっすらと残っている。もはや仕事がハードすぎていつのことかを思い出す余裕もないのだが、そのキングの視界に見慣れた色彩が映る。

「……マコト…」

ぽつりと…キングも意識していないだろう無意識に口から出たのは、真島マコトの名前だった。
一条もつられるように目を向ける。公園のベンチでなにやら見たような顔ぶれとそうでない顔ぶりに囲まれて笑っているマコトの顔がある。近くにはサルの姿も見られて一条は思わずぎょっとした。どうもマコトの周りに人がいるというのがキングにとってあまり気持ちのいいものではないらしい。キング自身にはそんなつもりもないのだろうが、空気が変わるから一条にも丸わかりだ。
だが、今日のキングからは空気が冷え込むような気配は感じられない。一条は怪訝な顔を浮かべる。

「……妙だな」

「何が、ですか?」

ポツリと呟いたキングに一条は冷静に聞き返す。キングは鼻で笑ったようだった。

「マコトの周りには…本当に奇妙な縁だらけだと思ってな」

ハハッ…と何がおかしいのかキングは声を出して笑っていた。その光景に一条ばかりか運転していたボディーガードたちまでがギョッとした面持ちを浮かべる。クールな王様が人前で笑うことなどめったにない。それがいったいどうしてしまったんだろう。一末の不安すら覚える。

「一条、お前は…どう思う?」

「どう…真島さんのことですか?」

他に誰がいる?といいたげにキングは目を向ける。一条は戸惑いながらも言葉を探した。

キングに与える影響の一番不確定な要因はまさに真島マコトだといってもいい。良くも悪くもキングに与える影響が一番大きい。自分も確かに影響を受けることはあるが、キングが絶対的なカリスマ性を持っているのだとしたら、真島マコトから受ける影響はいったいなんなのだろう。カリスマというにはあまりにも統一性がない。どちらかというとキングよりも掴みどころがない性分で、突拍子もないことを思いつく上に有言実行的な意志も強い。我武者羅で無鉄砲で、かといって無計画ではない。
天才と馬鹿は紙一重、というか…はたしてどちらにおさまる人なのか、と考え込みたくもない。

「…他者を惹きつける、才覚のようなものを…お持ちだと思います、が…」

「そうだな」

明確な答えを導き出すことは難しい。傍からはキレ者と呼ばれる一条ですらマコトを明確な表現できる言葉は見つからない。
それが、キングには面白いのだ。キング自身がマコトに対して明確な言葉を見つけられずにいる。高校の時から今まで、ずっとだ。だからこそ面白い。だからこそ惹かれる。マコトの何がここまで自分をひきつけるのか…日常の殺伐とした時間の中で唯一キングが興味をもてる事例。いや、キングではなく、安藤タカシとして、といった方がいいのかもしれない。

「だからこそ、面白い。…ヤツの周りは賑やかで良い」

独り言のような呟きに一条は首を傾げながらも同意した。

車は公園をすぎて仕事場に向かう。窓からも見なくなった公園でマコトが何をしていたのかなど後でいくらでも耳に入る話だ。それを一つ楽しみにキングの仮面を張り付けて仕事をこなす。クールなカリスマキング。それが自分の仕事だ。
一条もそれには同意しようとしたのだが、続いた呟きに思わず苦笑してしまった。



「邪魔なヤツが増えるのは……癪だな」








呟き:キングの仕事風景の1こま(笑) マコトが癒し系かな。