| 信じるってこと |
|
信じるってことは、絶対に最後まで諦めないってことだ。 少なくとも、俺はそう思うよ。 警察官になって、刑事になった。 刑事になったら、我武者羅に悪人だけを捕まえていけばいいんだと思っていたから。誰かの正義のヒーローになれるもんだとおもってた。弱きを助け、強きを挫く。そんなみんなのヒーローになれるんだと思っていた。 でも、実際は違った。 「おい、青島。次ぎいくぞ」 「ちょっと、ちょっと待ってよ、和久さん。まだここの現場は……」 「本店が来たら、俺たちの出番はねぇよ」 そういって背中を向ける和久さんは、どこか寂しげに思えたんだ。 警察の中でもいろいろと階級ってのがあって、それが高い人からの命令は例え「違っても」、みんな「YES」といわなきゃならない。黒い鴉を「白」だといえば、下っ端は「白」だと言わなきゃならない。 それが、警察だったんだ。 刑事になったけど、本当に助けを求めている人を時には突き放すようにして事件だけを、犯人だけを捕まえる。捕まえられるならまだ良くて、時には目の前で犯人を掻っ攫われたりするし、ただただ三日も寝ずにローラー作戦に借り出されるだけってこともある。事件に大きいも小さいもないのに、小さな事件は放っとかれる。 それを何度も見てくると、所詮「警察」も「会社」なんだと思うようになっていた。 「青島。正しいことをしたければ、偉くなれ」 そういった和久さんの言葉を理解したのはずいぶん後のこと。 毎日毎日捜査に追われてヘトヘトのある日、あの人がやってきた。 雪乃さんの事件で湾岸署に特別捜査本部ができて、俺はあの人の車の運転手になった。初めは本店だからってなんで所轄の刑事が運転手なんだ、と思ったよ。だって、あの人、初めてあった時から眉間に皺を刻んでて、なんか難しい顔ばっかりしていたんだ。こっちが話し掛けても聞いてなかったし、今じゃあ考えられないくらい無愛想だった。今でも充分無愛想だけど。 管理官としてここに来たとき、あの人、事件だけしか見てなくて、雪乃さんに対する言動があんまりにもあんまりだったから思いっきりぶつかってさ。今考えるとよくもまぁ管理官にあんなこと言ったなぁ……とも思うけど、でも間違ったことは何一つ言ってない。その気持ちだけはあった。 一つ一つぶつかって、なんでわからないんだと怒鳴りたくて、でも怒ったり悔しかった本当の理由は、信じてるものが同じなのに、なんで伝わらないのかということだったんだ。 たぶん、そうだと思う。 「君の名前は?」 相変わらず無愛想に、眉一つ動かさずあの人はそういった。 「青島です。ほら、都知事と同じ青島です」 それがよく考えたら初めてまともに会話した言葉だったように気がする。 事件が解決したら、それで終わり。この何日かのやり取りが俺にとってはまるで嵐のようだったけれど、この人にとってはいつもこんな中にいるんだと、終ってから気付いた。 また次の時にあっても、あの人は俺の名前忘れてて、「どこかであったか?」なんていうもんだから、こっちは閉口するしかないし。でも、「いくつも特捜本部を持っている」と言われれば、事件にいくら大小なんてないと言ってもちょっと気が引けた。言うことは言ったような気がするけど。 本店にもこんな人がいるんだと思った。 『正しいことをするためには偉くなれ』 そういった和久さんの言葉をこの人も持っているんじゃないかと思った。 所轄とバカにする本店の中で、この人は確かに俺たちの話を聞いてくれた。それをどうとるかはそれぞれの事情があるんだろうけど、この人はこの人なりに戦っている。俺たちと同じように毎日を戦っている。 だから、この人を信じて俺は所轄でがんばろうと思ったんだ。 誰にだって、得手不得手はあるだろ?室井さん。 呟き*なんとなくなんとなく。今度は青島視点で。 |